1830年創業 和薬・漢方 本草閣 名古屋鶴舞

やはり男性は昔から「か弱い美人」が好き?? ~美人を漢方で表現すると・・・~2016年03月17日

<漢方の目線で見る美人を表す言葉>

美人を表す言葉として、次の言葉を耳にした事があるのではないでしょうか。

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。」

芍薬も牡丹も共に美しい花で、百合は清楚な花であることから、美人の姿や振る舞いを花に見立てて形容する言葉です。

芍薬は、すらりと伸びた茎の先端に華麗な花を咲かせる為、その姿はまるで美しい女性が立つ様であり、牡丹は枝分かれした横向きの枝に花をつける為、美しい女性が座る様。
百合は風を受けて揺れる様が美しいため、美しい女性が歩く姿のようだ、との意味を持ちます。
また、諸説として、芍薬は立って見るのが一番美しく、牡丹は座って見るのが一番美しく、百合は歩きながら見るのが一番美しいという説も。

立っていても、座っていても、歩いていても美しい・・・
そんな大和撫子の女性になりたい、と日本女性であれば一度は憧れたことがあるでしょう。

ちなみに、私は背も高い為に男性を超える場合もあり、対面で座れば目が横に長いので楚々としていませんし、歩くスピードは速いです。
この言葉とは正に真逆の女性像であるため、この言葉の様な女性には憧れ、また嫉妬の対象になります。笑

だから??笑、ここで漢方薬剤師としてこの表現に疑問を投げかけてみます。

果たして、これは本当に美人を形容する言葉なのか??

<漢方における芍薬・牡丹・百合の効能>

ここで出て来る花は3つ。
芍薬、牡丹、百合。
すべて「花」は美しい。
しかし、植物は「花」だけで出来てる訳ではありません。
勿論、茎や根や葉だってその植物を構成する重要な部位。

そこで、本当はこの言葉は「花」以外の部位でこの植物を表現していたとしたらどうなるでしょうか。
漢方処方で、この3つは生薬として使用されます。
しかし、その使用部位は、花ではなく、根(芍薬)や根の皮(牡丹)、鱗茎(百合)です。

では、それぞれ、どの様な効能があるのでしょうか。

「芍薬」
芍薬(根)は、筋の痛みや緊張を緩めます。
女性で頻繁に使用される「当帰芍薬散」に配合されています。
この当帰芍薬散、非常に有能な漢方処方であり、身体を温め、余分な水をとり、月経を整え、痛み(生理痛含む)を去る処方となります。

昔から、「当帰芍薬散美人」と言う言葉があり、あの「竹久夢二」の有名な絵が正にその「証」に合うと言われています。

つまり、顔は面長、柳腰で立ち姿はすっきり、声は優しく耳辺りが心地よく、しぐさがおっとりしていて、ちょっと手を差し伸べてあげたくなる日本美人のイメージが当帰芍薬散証。

また、芍薬は、筋肉の引き攣れ(足の攣り)などに使用される「芍薬甘草湯」にも配合されています。
つまり、繰り返しますが、芍薬は、固まった「筋の痛みや緊張を緩める生薬」なのです。
shakuyaku

「牡丹」
牡丹皮(根の皮)は、瘀血(おけつ)と呼ばれる古い血を取る生薬です。
月経が一度でもある女性(閉経されていても)は、この瘀血と呼ばれる古い血があり、それが女性の心身の疾患に悪影響を及す事が多い、と漢方では考えます。
例えば、情緒不安定や、皮膚のくすみ、生理痛、子宮筋腫や不妊症なども考えられます。(瘀血だけがこれらの疾患の原因ではありませんが。)
牡丹皮も芍薬同様、数多くの漢方処方で使用されています。
ちなみに、女性の漢方処方で有名な「桂枝茯苓丸」は、上記の芍薬もこの牡丹皮も配合されています。
botan

「百合」

百合(鱗茎)は、鎮静作用があり、精神の病に効く生薬です。
昔は、精神病の一種を百合病と呼びました。
この鎮静作用が主である漢方処方が百合知母湯。これは百合と知母の二味からなり、熱病の回復期で余熱によるイライラや動悸、寝つきが悪いなどの症状に用いられます。
yuri

もう、お分かりですよね。

そう、つまり、この「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。」の表現、
実は漢方の目線で見ると、女性の疾患を表しているかもしれないのです!

女性は、「筋が緩んでいなく緊張状態」にあり、「瘀血」があり、「精神的に不安定」であることが多い為に、この表現が出来たのではないか・・!
美人を表現してるのではなく、女性の疾患を表現していた・・!!
それを美人の表現としてすり替えられた・・・

なんて、勝手に解釈してしまう漢方薬剤師の私です。笑。

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